乗らない自転車で駆け抜けた夏

まっ、マジか! ここまで来てこんな落とし穴に落ちるとは、もうお終いか・・・・。

2年間の修行期間を経て、今年の夏に整備士試験を受けました。正しくは、「自転車技士」と「自転車安全整備士」の2つですね。前者は日本車両検査協会、後者は日本交通管理技術協会が管轄します。一回の試験で双方を受験することが出来るようになってます。便利な世の中ですな。

自転車整備士の実技試験は、7分組みの自転車に対して、チェーン切って、後輪をバラした状態から、ヨーイドンで組み立てるものであります。その制限時間は80分。その時間を長いとみるか、短いと見るかはそれぞれでありますが、実際にやってみるとそう簡単にはいかないものであります。主にホイール組に時間がとられますが、振れ取りに熱中してしまうと、組み立ての時間が無くなって、最後まで間に合わなくなったりします。逆に振れ取りを適当にやっちゃうと、ホイールを装着した時にセンターが出てなかったりだとかブレーキの当たり調整時にリムと擦ったりして調整がうまくいかずにこれまた時間切れとなったりします。組み立てのクオリティとスピードが求められるものですが、言い換えるとある程度の妥協と割り切りが必要なのです。
そんな作業時間と妥協点の見極めをするために、試験用に準備した自転車を、何度も何度も、何度も何度も、組み立ててはバラすを繰り返しました。それが今年のあっつい夏の思い出でなのであります。外光を遮った涼しい部屋・・・と聞こえはいいけど、薄暗い部屋でのホイール組、うつろに響くストップウオッチのタイムアップ、専用工具を使うより指で回した方が早いかもと、ニップルを締めたり緩めたり、その影響で右手の人差指は油が染み込んで石鹸で洗っても落ちなくなりました(泣)
そして、その間発生したトラブルは数えきれず、例えば、ホイール組を何度もやったおかげで、リムが疲弊して、テンションかけたらいきなりメビウスの輪のようになってしまったとか、スポークを折ったりニップルを潰したのも数知れず、シートピラーを締めるシートピンを2本も折りました。ワイヤー末端がバラけて指に刺さってぎゃーってなった事もあったっけ(笑) 

そんなこんなで編み出した、最終的な妥協と見極めの目論見は、
 1 ホイール組と振れ取り調整を30分。そしてそれのマージンを5分
 2 車体組み立てを30分。そしてそれのマージンを5分
 3 残りの10分でレギュレーション通りに出来ているかどうかのチェックに充てる
というものでした。まあ、あれだけやったし、落ち着いてやれば何とかなんじゃねという気持ちで受験当日を迎えたのであります。

しかし目論見通りとはいかないのがこの世の常。冒頭のシーンは、実技試験が1時間を経過したあたりに発生した試練であります。前日の最後の練習では比較的スムーズに出来ちゃったのに、試験当日は大小3つの試練がありました。
◼️第1の試練
ホイール組の時にニップルのネジがバカになって締め込めないという事。
それ、さっきバラした時のニップルなんだけどね。慌てて予備のニップルと取り替えたりしたので、前半のマージンを使いました。その前に、ニップルを予め並べておくケースを倒して、ワークエリアにばら撒いて焦ったというのもありました(笑) 
◼️第2の試練
RDのワイヤーがバラけてディレイラーのアジャスターの穴に通らなくなった事。
バラけ防止に各ワイヤーの先端はハンダつけをしていたにも関わらず、練習を繰り返していたからか、よりによって試験の時にバラけたのでしょう。ワイヤーカットして余計バラけたらもうそれは運の尽き、エイヤって切ったらとりあえずまとまっていたので、何とかクリア。ふ〜、アブねー。
◼️第3の試練
繋いだチェンがチェンリングの裏で8の字になっていた事。
組んだホイール嵌めて、チェンをRDを通して、FDとチェンリングを回してから、落ち着いて繋いだら、チェンリングの向こう側で、チェンは8の字になってました(泣) それが冒頭の心の叫びであります。いや口にしていたかもしれません。うーん、今更チェンを切って取り回しをやり直すのはもう時間が無い。ディレイラーの調整もまだだし・・・。でも、諦めたらお終いじゃという事で、改めてチェンを切って、8の字を直してから、再びチェンを接続しました。今回受けた社外講習時では、チェンの接続は、切る時はチェンピンを内側に押し込んで、つなぐ時はチェンをひっくり返して、改めて外側からチェンピンを押し込むという手順で習っていたので、個人的に従来からやってた、チェン切りを内側に回してそっちから押し込む方法は封印をしていました。チェンをひっくり返してオーケーというのであれば、いずれも押し込む方が合理的。がしかし、今やそんな事は言ってられません。封印を解いてやったら当たり前のようにチェンは繋がりました(笑) 今まで我流でもやっていて良かった・・・。


やっぱり普段の練習と、会場での試験は違うもんだ。
広い会場にはいろいろな奴が、いろいろな自転車を持ち込んで、そして色々なスタイルで組み立てに取り組むから、発する音だったり動きが気になったりします。微妙な振れ取りは、光の具合で目で見ても良くわからないから音だけが頼りだったけど、周りの奴らが発する雑音でそれが聞こえなかったりします。もうちょっと静かにやってくれよ(笑)

今回試験用に使った自転車は、必要最低限のレギュレーションに準拠した自転車で、仕事先で一括して手配されたものです。だからという訳じゃありませんが、車輪はクイックリリースじゃないし、ましてや、フレームにホイールを嵌めてそのままネジ締めれば良いというものじゃありません。エンドが多少広めに作られているので、リムの左右幅をちゃんと見て揃えながら左右のナットを締めないと車輪が傾きます。その際も、ハブの玉押しの外側のネジを意識しないと、車軸のネジだけをバカバカ締めると軸と一緒にそれが共回りして結果的に玉押しが締め込まれて、車輪の回転が渋くなるというシロモノであります。えっ、何でこれ回転渋いの?と最初は悩みました(笑)
それでも、何度もやる事でツボというかコツがわかって来るし、それが故に段々と愛着も湧いてくるというものです。色々と手間がかかったり面倒な事になったりと、最初はこのヤローと思うことも多かったけど、冷静に考えてみるとこちらの扱いが雑だったり、いい加減な事をした結果がそのまま跳ね返ってきてることに気づかされました。そう考えると、今年の夏は外に遊びに行くことは出来なかったけど、結構濃い時間を過ごしたなと思うのです。


トップ画像は、実技試験の後、試験官によってチェックされてから戻された時に撮りました。
ひと夏一緒に過ごした「愛車」、乗る機会はなかったけど、一緒に駆け抜けた夏だったなと感謝の気持ちで一杯になりました。

試験の際は基本的にこのシートの上だけが作業エリア。
一般的にはブルーシートを用意しなって言われていたけど、白いブルーシート(?)にした。細かいネジやワッシャがビーンと飛んだ時にこれの方が探しやすいだろうと思ったから。しかし白いとそれだけ汚れも目立ったり(笑)
これは、7分組をさらにバラした図。本来であれば更に後輪だけをバラす。

外部講習に行くため、最初の頃は輪行したっけな〜。死にそうになるほどの重さ(笑)
キャスターバッグの中には、白いブルーシート、工具、振れ取り台、折りたたみ椅子・・・。

自宅でもリビングの一角を占拠して、練習した。これは試験に出かける前日の図。
ここで、甲子園見ながら車輪組したもんだ(笑)

ニップルを整然と並べる事ができるケース。右手に見えるニップル掴みで一つづつ掴んでスポークにねじ込むんだけど、ケースそのものが小さいので、掴む時に力の加減で横倒しになって整然と並んだニップルがそこら中に飛び散っちゃう(笑) 練習中に、「横倒しにならないような練習」も何度もしたけど、試験の時には「お約束通り」やはり飛び散った(笑)

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乗らない自転車で駆け抜けた夏” に対して18件のコメントがあります。

  1. austintexas より:

    お疲れさまでした。
    プロだけが経験できる素晴らしい夏の思い出ですね。
    いつの日か後に続きたいと思います。

    1. taboom より:

      austintexasさん こんばんは。

      今になって思い返すと良い思い出ですが、やってる時はそれどころじゃありません。
      思い通りに手が動かない焦り、トラブルに対する必要以上な恐れ、天気も良いのに出かけられない焦燥など、いろいろな鬱憤が渦巻く期間でした。
      でも、過ぎてしまえば思い出は全て美しい(笑)
      ぜひ、機会があればチャレンジしてみてくださいね。

  2. INTER8 より:

    おはようございます。
    素晴らしい夏を過ごされたようですね。
    試験というのは何時になっても緊張しますから ドキドキ そわそわ、チビりそうになったり、ピュッと出そうになったことと思います。ならないか (^^;
    人様の自転車を整備してお金をいただくには、こうした技術を身に付けなければいけないんですね。時間制限があるのは、必要以上に時間を掛けてその分の代金をいただく、という不届き者を排除するためでしょう。自動車整備でも標準工数があるようですからね。
    いやいや、これを見て僕は趣味で自分の自転車だけを弄って楽しもうと、改めて思いました。

    1. taboom より:

      INTER8さん こんばんは。

      そうなんです。試験なんてもう何十年も関わっていなかったから、かなり緊張しました。
      実技試験に加えて筆記試験(選択式)もあるのですが、模擬試験の際に、回答してる途中で、自分の名前書いてない事に気付きました。受験していた頃は、まず最初に名前かけと嫌という程いわれてたなと思い出しました(笑)

      >ちびりそう
      これ、本気で悩みました。実技試験の最中は、結構動くのでその時に尿意を催したらどうしようとマジに心配しました。試験開始前のわずかなチャンスがあればトイレに行った事で事なきを得ましたが、年取って近くなると心配のたねです。
      安全が全てに対して優先されるのですが、馬鹿丁寧にやってもそれで工賃が高くなるというのは本末転倒ですから、それに最適な時間で仕上げるというのはやはり必要でしょうね。

  3. より:

    「1 ホイール組と振れ取り調整を30分。」
    いやー、見ただけでゾッとしますな。私には無理です。

    とんちんかんな質問かもですが、7分組の自転車は誰が判定というか、組むのですか?
    それとも自己申告ですか?
    ホイールの7分組って、どんな状態ですか? (笑)

    ところで、今年は筑波の秋祭り開催のようです。
    10/29(土)~11/6(日)
    11/5(土)だとすると、前日に大学の同期会なので今年は微妙です。(笑)

    1. taboom より:

      眞さん おはようございます。

      最初に持ち込んだ自転車を、「前準備」という段階で7分組の状態までバラします。それを会場を見回る試験官が目視で確認します。
      その時に、必要なネジの締め込みがされているか確認されて、あらかじめバラしやすいようにしてるとその場でちゃんと締めなさいと言われます。
      ホイールもそうで、バラしやすいようにテンション緩々にしてると指摘されてその場で締め上げさせられます。隣の人が必死こいて締めてました(笑)

      今年はつくば祭りちゃんとやるようですね。良かったです。
      祭りの予定をみると11月3日がいろんなイベントが集中するから行くなら3日が良いと思います。
      私は予定がまだ立たないので未定です。

  4. oryzasativa より:

    おつかれさまでした

    気が向いたときに
    マイ自転車を弛緩気分でいじるのと対極。
    緊張の夏ですね。

    益々の技能研鑽を期待します。

    1. taboom より:

      oryzasativaさん おはようございます。

      ありがとうございます。
      まあ、これは趣味とは別の世界です(笑)
      先日、TBCWさんにお邪魔した際に、この手の話で盛り上がりました。
      でも、隣の列には個人で受験されている人がいて、試験車としてコルナゴを持ち込んでました。
      よく考えたら、レギュレーションさえ通れば、組み立て簡単だしその手もあったかと思いました(笑)

    2. 六浦っ子 より:

      厳しい世界ですねー のーてんきに夏キャンなんぞにお誘いしたあたしは恥ずかしいです(^^; でもトゥーリングの時、プロの整備士さんとご一緒できると超安心であります。来年は夏キャン行きましょう。

      1. taboom より:

        六浦っ子さん おはようございます。

        せっかくキャンプにお誘いいただいたのに失礼しました。
        残念でしたが、こんな感じの夏だったのです。
        もうちょっと寒くなったらキャンプ行きましょう(笑)

  5. TAKOぼん より:

    こんにちは
    青春の汗臭いにおいが・・・加齢臭の間違いか!・・・ がしますね~
    私 試験は びびりなんで 失敗ばかりでした。
    とにかく無事やり終えて おめでとうございます。(まだ 試験結果はわからないのかな)

    次は プロショップ 楽しみと苦労がいっぱいですね。
    あれ プロになったら 走れないのじゃないですか?
    のんで歌って 走れる プロショップを目指してほしいです。

    1. taboom より:

      TAKOぼんさん おはようございます。

      確かに占拠したリビングには加齢臭はともかく、ラスペネの匂いが漂ってました(笑)
      おかげさまで試験は無事クリアしました。ありがとうごございます。
      先日手元に、人相の悪い証明書が送られてきました。
      提出した写真をスキャンしてるんでしょうけど、そのクオリティは運転免許にはぜんぜん及ばずかな(笑)

      >次は プロショップ
      いやいや、そこまで高望みしてません。ガレージで修理をやりたいと思ってます。
      そして出来るだけ休みを多くして十分遊べるように・・・(+_+)\バキッ!

  6. norymaru より:

    こんにちは
    クリアされたんですね
    おめでとうございます 作業着エプロン姿楽しみにしてますね
    ではです
    Norymaru

    1. taboom より:

      norymaruさん おはようございます。

      おかげさまで、なんとかクリアしました。
      ありがとうございます。
      そのうち、広島に報告に行きますので、よろしくお願いします(笑)

  7. ぶとぼそ より:

    おはようございます。
    人様の自転車をお金もらって弄るというのは大変なことだと思いました。
    不完全な自転車でお客さんがトラブルを起こす事を考えると当たり前のことなんですが、商売と趣味で弄るレベルの違いを再認識させらました。
    テスト、それも複数人で一斉にとなるとプレッシャーありますよね。お疲れ様でした!!

    1. taboom より:

      ぶとぼそさん おはようございます。

      >人様の自転車を・・・
      サラリーマン辞めてバイトを始めた頃に、これは確かにちょっと違うぞって思いました。
      自分の自転車であれば、あれっ?って思っても気づいた時に直せばセーフと思ってましたが、手を入れた自転車とはもう2度と合わないかもしれないと考えたら、ちょっと怖い・・・。始めた頃は、後になってから、あれちゃんと締めたっけと気になったりしてました。そう思わない為にも、手順と確認を愚直に徹底することだと肝に命じてます。
      実技試験は、独特な雰囲気で、同じことを同一のタイミングでやってる事を考えるとワクワクしてきますが、今回は結果が伴ったから良かったですが、あれをもう一度というのはちょっと勘弁してもらいたいです(笑)

  8. 蛍゜ より:

    何はともあれ合格おめでとうございます。

    試験で使用します自転車が、荷台、泥除け、スタンド、ブレーキが全てハブ軸止めの正爪でなくて良かったですね!!(習熟したとはいえ、いくら何でもそれはないですか?)

    コルナゴでもよいところを、そこそこ面倒で高精度でもない極々一般的な自転車を
    taboomさんの会社が用意されたのに、プロの職業人を育てるという会社の見識を感じます。

    いよいよお宅のガレージのシャッター上げてお店開業ですか? 
    お店の名前はどうなるのかな~~~

    1. taboom より:

      蛍゜さん こんばんは。

      ありがとうございます。経緯はともかく取ってしまえばこっちの・・・(+_+)\バキッ!

      試験用の自転車は、荷台や泥除けはいらない(というか外しておけ)ブレーキはVブレーキもしくはキャリパー式が指定されてます。
      ただ、試験はともかく、正爪の軸留めという自転車は否応無しに触らなきゃならないので、これも慣れですね〜。
      でも、慣れと言っても、スタンド広げたり、力技というか技じゃなくてもう力そのものでやらなきゃならないのには閉口します。何台もやっつけると帰る時にはヘロヘロです(笑)

      ガレージのシャッターを開けるにはまだちょっと時間がかかります。中に入ってる自動車の退避先をまず決めなきゃ。そこからか!と言われそうですけど(笑)

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